当センターは小児期の病気や傷害のために重い障害を遺した成人(18 歳以上)の方を対象とする横浜市内最初の入所施設「横浜療育園」として、1988年2月に開所しました。当初は60床の入所棟と生活介護(通所)でスタートし、医療必要度の高い利用者さんの増加に対応するため 2003年に105床に増床して現在の名称に改称しました。その後も在宅の利用者さんに対する支援事業を拡大しながら今日に至っています。
現在、当センターは障害者総合支援法に基づく「療養介護事業所」、児童福祉法による「医療型障害児入所施設」および医療法上の「一般病院」の3つの機能を持つ複合施設として、障害を持つ方々の小児期から成人期までライフステージに応じた支援を、多職種の専門職員によって提供する体制を整えています。
在宅生活を送るお子さんには短期入所と放課後等デイサービスを、高等学校卒業後は生活介護(通所)と短期入所を提供し、並行して家庭での医療ケア・処置のための訪問看護と日常生活支援のための訪問介護をご利用頂けます。在宅生活の継続が困難になった際には長期入所(療養介護)への移行が可能です。そしてその全期間を通して、種々の合併症の治療・管理を行い、リハビリテーションや食事の工夫などによる身体機能維持に積極的に取り組んでいます。
また近年は市内外の療育センターでの訓練・診察を終えた学齢期の神経発達症(発達障害)のお子さんに対して、各種リハビリテーションや心理相談と小児科・児童精神科医療を提供しています。
世界人権宣言には、すべての人は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、出自、その他いかなる理由による差別を受けることなく、すべての権利と自由とを享有することができる、と謳われていますが、 障害の有無や程度もそれら特性のひとつであり、障害をもつ方ももたない人と同じ権利と自由を有しています。また障害者権利条約は、障害者が障害のない人と同じように教育を受けたり社会生活を営んだりすることができる権利を定めており、障害者の生活上での困難は、心身の障害そのものではなく、社会との関わりの中で生まれる、という「障害の社会モデル」を提示しています。
しかし現実にはその「社会的バリア」は解消されることなく存在し、むしろ現在、多くの国で自国の利益を優先させ、人道的支援や社会的マイノリティへの配慮を切り捨てる傾向が強まっていると感じます。人類全体あるいは世界的規模での持続可能な営みへの視点が欠けていると思わずにいられません。私ども障害福祉医療に携わる者は今後も社会的弱者のアドボケーター(代弁者)として、差別を無くし、その権利と自由を保障すべく活動を続けて行きたいと考えています。
近年、新型コロナウイルス感染症のパンデミックや地震や風水害などの甚大な自然災害が頻繁に発生し、そのたびに障害を持つ方の生活がより大きく脅かされる状況が生じています。当センターではそのような非常事態が発生した際も可能な限り事業を継続できるような仕組みを策定し、継続的に改善し続けることで不測の災害に備えています。
今後も当センターは関係機関と連携を取りながら、必要な事業の拡充を図って参りたいと考えておりますので、多くの方々のご理解とご支援を頂けますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
2025年4月
センター長 甲斐 純夫
主な経歴
1982年 |
浜松医科大学医学部卒業 神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、腫瘍科シニアレジデント |
1985年 |
済生会横浜市南部病院小児科 |
1988年 |
東京大学医科学研究所制癌研究部 |
1990年 |
横浜市立大学医学部附属病院小児科、臨床検査部 |
1994年 |
横浜市立港湾病院小児科医長 |
2005年 |
済生会横浜市南部病院小児科部長 |
2012年 |
同 副院長 |
2016年 |
横浜療育医療センター センター長 |
専門
小児疾患全般、発達障害、心身症、感染症
資格等
日本小児科学会小児科専門医・指導医
日本医師会認定産業医
日本小児科医会子どもの心相談医
インフェクションコントロールドクター
医学博士
利用者の生命・人格・尊厳を守り、実り多き人生を支えます。
私たち横浜療育医療センター職員は、